複雑な事情をもつ子どもへの対応を考える 後編

こんにちは。デクです。
デクってこんな人です。

 

 

前回、複雑な事情をもつ子どもへの対応について、
考えさせられた、というお話を紹介しました。

 

複雑な事情をもつ子どもへの対応を考える 前編

 

今回は、その続きです。

 

 

もしも、
自分が同じような状況にあったら、
どんな対応をするのか、
よかったら、一緒に考えてみてください。

 

 

それでは、はじめます。

 

 

目次

Aさんとの会話は増える

 

 

 

時間の経過と共に
Aさんとの会話をする機会が
増えていった。

 

 

 

話したいような、
離れたいような、
あいまいな距離を保ち、
ポツリと話しかける。

 

 

 

「早く家に帰りたいです。」

 

 

「弟の世話かい?」

 

 

「・・・いや、ゲームがしたくて。」

 

 

「そっか、ゲームかぁ。それにしても今のゲームはどんなものが流行ってるんだい?」

 

 

「えーっと、銃を使ってやっつけるゲームとか。。。」

 

 

 

Aさんは、あまり弟の話題に触れてほしくないようだった。
察知して、私も合わせて話題にのっていた。

 

 

とりあえず、Aさんにとって、話したい内容を優先しよう。
まずはAさんの学校生活が、いいものになればと思うからだ。

 

 

 

Aさん中学2年生

 

 

 

Aさんに弟ができて1年ほどたった。
私とAさんは、いつもの距離で話をする。

 

「お母さん、元気ないんです。」

 

 

「そうなのか。心配だなぁ。」

 

 

「お父さんは、弟にひいきなんです。僕と兄には冷たい。」

うつむいて話す。

 

 

 

「だからこの間は、親戚のじいちゃん、ばあちゃんの家で過ごしてた。」

 

 

返す言葉に戸惑いを覚える。
いろんな状況を考える。
土日勤務で、親が子どもの面倒を、
みれないときだって十分ありうる。

 

 

 

私はただ聞くことに徹することを選んだ。
話を聞くと、どうやら、Aさんのみが親戚の家に預けられるらしい。
お兄さんはバイトだそうだ。
Aさんと父親、母親との関係は気になる一方だ。

 

 

 

 

Aさんは、特に月曜日が休みがちだ。
話を聞いていくと、その理由が見えてきた。

 

 

流れはこうだ。

 

 

土日は親子の時間がない。
Aさんは親戚の家に預けられ、
寂しさを埋めるように、ゲームにのめりこむ。
リズムが狂い、月曜日に体調を崩す。

 

 

 

Aさんにとっては、行き場がないように感じる。
寂しくて、生きづらそうで。

 

 

 

弟の誕生により、
家族内の愛情のバランスが崩れているのではないか。

 

 

 

私は、Aさんの担任の先生に相談し、
担任の先生から、
それとなく親に話をしてもらうように頼んだ。

 

 

 

幸いにも、担任の先生はママさん先生だ。
その気持ちを汲んで話してくれていた。

 

 

 

3年生進級直前の出来事

 

 

 

Aさんが入学して2年が経とうとしている。
担任の先生のフォローがあり、
Aさんは登校を続けている。

 

 

 

ただ、やり場のない寂しさは拭えないように感じる。
寂しさは次第に憤りになりかねない。

 

 

 

今日はいつも以上に気がたっていた。

 

「あーっ、もうイライラする」

 

Aさんの感情がトゲとなって、
言葉にくっついてくる。

 

 

 

「そっかぁ」

 

 

いつもの調子で私はこたえる。

 

 

しかし、今日はAさんのトゲがいつも以上だった。
その言葉は急に出た。

 

 

 

「先生、ちょっと死んでくれませんか?」

 

 

 

私は驚いてしまった。

 

 

少なからずも、命の大切さを伝えていた自信があったし
優しい一面も感じていたAさんからその言葉が出たことにもショックだった。
それが自分に向けられていたこと。
驚きとショックで、心が痛んだ。

 

 

 

「そんな言葉を言われると、こっちが不愉快だからやめなさい。」

 

 

反射的に出てしまった。

 

 

 

私は、その言葉を放ったAさんの、
その時の気持ちや悩みを聞くことはできなかった。

 

 

 

大人の正論。
Aさんにとっては一番聞きたくないような言葉だ。

 

 

Aさんは、だまった。
会話はそこで終わり、Aさんはその場を立ち去った。

 

 

 

跡を濁して去る

 

 

 

学校生活における春は、
出会いと別れの季節だ。
それは、生徒にとっても、先生にとっても同じだ。

 

 

 

私は異動となった。
まさかその会話がAさんとの最後の会話になるとは思いもしなかった。

 

 

 

あれから、ふと思い出す。
死んでくれませんか?の言葉にある、
Aさんの本当の気持ちとは何だったのか。

 

 

寂しさ、やりきれない想い、自分の存在、
言葉では表現できない気持ちを、
Aさんなりに表現しただけかもしれない。

 

 

 

Aさんのことをもっと理解していたら、
かける言葉は違っていたのかもしれない。

 

 

 

「どうしたの?」
その一言だけでもよかった。

 

 

 

自分の未熟さを感じた。

 

 

 

Aさんのことは気になる。
だが担任の先生がいてくれる。
あとは任せて、
これから出会う生徒に真摯に向き合おう。

 

 

 

それが、
Aさんへの私に教えてくれた教訓でもあるのだ。
遠くからにはなるが、
AさんがAさんらしく生活していくことを心から願っている。

 

 

 

(このお話はフィクションです。
設定等も実体験上の設定ではないので、
ご了承ください。)

 

 

 

おわりに

 

 

 

お話いかがでしたか?
複雑な事情を抱えた子ども、
今回は一例ですが、複雑で多様な生活の中、
子どもの心の中も、また複雑です。

 

 

 

親とのかかわりの希薄さを補うかのように、
先生にそのかかわりを代替するようなこともあります。

 

 

 

今回のAさんは、
父親の存在を先生にうつして部分もあったように思います。

 

 

 

先生としては、
Aさんのこれからのことを考えたときに、
躾として教える必要はあると思います。
しかし、その言葉にある気持ちに寄り添いたい。
母親のようなケアの必要性も感じていました。

 

 

 

一言で表すと、厳しさと優しさ。
子どもを育てるときは、改めてこの2つが大切だと思います。

 

 

 

子どもを育てることは本当に大変なことと思います。
ですから、
保護者の方々の気持ち、子どもの気持ち、
両方の心のケアも必要になってくるように思います。

 

 

 

今後も私なりに教育、
子育てに関して考えたことを発信していけたらと思います。

 

前編をまだお読みでない方は、
ぜひこちらも合わせて読んでみてください。

 

複雑な事情をもつ子どもへの対応を考える 前編

 

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よかったらご覧ください。

 

「成功する子 失敗する子」から学ぶ子育て術①

 

「成功する子 失敗する子」から学ぶ子育て術②

 

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